ドメスティック・エマージェンシー
入る度に紙袋を抱き締める。
飛び出しそうな心臓をそうやって押さえ込むも、よりいっそう高く早鐘を打った。

「江里子……」

祖母の声が私を呼ぶ。
何年ぶりだろう、なのに私は俯いて顔を見れなかった。

恐くはない。
私はもうなにも恐くない。
ただ、たくさんの心配を彼女は何日も抱えたに違いない。
それが申し訳なかった。

唖然とする祖母に、ごめん、と謝る。
そうして私はやっと顔を上げた。

「おばあちゃん、久しぶり」






< 192 / 212 >

この作品をシェア

pagetop