ドメスティック・エマージェンシー
しばらくして祖母が入ってきた。
私が泣き止んだ頃にタイミング良く入ってきたから、見計らっていたのかもしれない。

私と有馬の前に湯飲みを置き、茶菓子を置いてくれた。

「有り合わせだけど」

祖母が苦笑いを浮かべる。
私は首を横に振り、ありがとうと感謝の言葉を述べた。
まだ声が掠れているが、祖母はやはりなにも聞かずに向かいに腰をかけた。

「さて、江里子。あの子たちには連絡したの?」

首を横に振る。
祖母の差している人たちが両親だと理解したからだ。

「そう……そうね、ここにも連絡してないんだから。有馬はもうすぐ高校受験なのよ」

言われて、有馬に視線を移す。
有馬は「バカ高だけどな」と、照れ笑いを浮かべた。

「あなたはこれからどうするの?」

祖母が、何よりも現実的なことを聞いた。
前は現実から目を背けていた。
聞かれるのが嫌で、誤魔化していた。

だけど、今の私は――







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