ドメスティック・エマージェンシー
「どうして出て行ったのか、聞いていいかしら?有馬も……あの子たちも、分からないみたいなの」

あの子たち、とは私の両親のことだとすぐに悟った。
直後に、神経を逆撫でする。

分からないのか、あの二人は。
私をロボットのように扱っていることにも気付いていないのか。

バカだ、と叫び罵りたくなった。

代わりに空気を肺に入れる。
ラベンダーが混ざった空気が、私の苛立ちを宥めてくれる。

感謝しながら大きく口を開いた。

「うん。おばあちゃん、私ね……あの人たちに必要とされてないの」

祖母は黙っている。
驚きを微塵も出さない。
予期していたことなのかもしれない。
有馬も同じことを言ったのだろうか。

「たぶん、世間体しか気にしていないのよ。
いかに自分たちを貴族のように見せるか、それしか考えてない。
私たちは……私は、あの人たちの外見を良く見せるためのアクセサリーみたいなもの」

すすり泣きが雑音のように届いた。
「有馬」と、祖母が呼び掛ける。
弟に寄り添う祖母を脳内で描きながら「私はそれが嫌だから出て行ったの」と、きっぱり言い放った。

嫌なのだ。
もう[イイコ]は、苦しい。
本当の私で愛して、必要として欲しかった。





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