フシダラナヒト【TABOO】
行ってくるね、布団の中の彼氏にそう告げて旅館を出る。




「うー、寒い」

吐く息は白く、かじかむ手をさすって目的地へと歩く。


いつからか旅先で朝の街の写真を撮るようになった。朝が苦手な彼氏は誘っても無駄で、いつも一人。




「ここだ」

小高い丘の上の旅館は少し歩けば見晴らしのいい場所に出る。ネットで見た時、私の撮るミニチュア風の写真にぴったりだと思った。


良いアングルになるようカメラを構え、シャッターをきる。




「街の写真ですか?」

突然の声に驚き振り返ると男がいた。服装も髪も瞳も真っ黒なのに肌は透き通るほど白い、息をのむほど美しい人。

写真に夢中になっていたせいか足音も気配も感じなかった。
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