フシダラナヒト【TABOO】
今日は珍しく何も聞こえてこなくて、聞き慣れたBGMがなくて寂しいような安心したような変な気分。


しかもあの日と同じくらい良い天気で、洗濯物を持ってベランダに出た。

と同時に始まる寿限無。詰まることのない完璧なもの。




「先日はどうも。洗濯機の音が止まったから出てくると思って。落語ちゃんと覚えたから干しながらでも聞いて」


突然で自分が話しかけられたことに気づくのに時間がかかった。



彼の寿限無は壁越しに聞くより声に抑揚があって面白く、洗濯物も干さずに聞き入り、終わると自然と拍手をしていた。



顔も見たことのない隣人の落語を聞くなんて、変な休日の過ごし方。



「毎週放っておく酷い彼氏を待つくらいなら僕の落語を聞くほうが楽しいでしょう。君さえよければ、これからも」



彼の申し出は、本当はずっと寂しかった私の心に突き刺さった。
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