身勝手な彼女と、都合のいい俺(短編)
途端に立ち込める、甘い香りに。

俺のネクタイを緩めて侵入してくる、しっとりとした手の感触に。

ドクン、と胸が波打つ。

ゆっくり振り返ると、彼女は俺のメガネを外しながら潤んだ唇を開いた。

「してよ」

唇を濡らしたのはビールだと分かっているのに。

俺の理性はまるでその泡のようにしゅわしゅわと消えていく。

俺はなけなしの理性で何とかコンロの火を消して。

そのまま、まるで花の香りに引き寄せられる蝶のように彼女に口付けると。

あとはごく自然に。
サキさんと一つになった。
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