ふたりがひとつ
それからの日々、私は何かにつけて一緒にいる亜紀乃と樹の姿を見ては、苛々していた。

「ねぇ。那津、機嫌悪い?」
話をしても、あまり声を出さず、しかも極端に口数が減った私に、亜紀乃は聞いてきた。
「別に。」
あからさまも良いところだ。
恐らく私の顔は不機嫌な表情を出して、人を寄せ付けないオーラを漂わせていただろう。

この時の私は、樹を独り占め出来ないという苛立ちよりも、亜紀乃が毎回私の席に来ることが鬱陶しいから苛立っていたのかもしれない。

席は名前順であったため、私と凜は前後の席で、1人遠くの席の亜紀乃が、私達の席の近くに来て話すのが当たり前だった。

私は何故か友達を拒み、ひたすら1人になりたがった。
そして、いざ亜紀乃と樹が2人でいると、凜に「はぁ。やっと落ち着いた。うちらのこと、何か言ってるのかねぇ?まぁいいけど。」と愚痴を吐いていた。

一方凜も、やはり毎日亜紀乃が来るとなると(樹はたまに先にクラスに戻ることもあるため)鬱陶しいのだろうか。
私と多少は感情を共有していた。

ふと、私は2人になった時に凜に「あの2人、最近くっつきすぎじゃない?せっかく樹はここに来てくれてるのに、うちらあんまり話出来てなくない?」と愚痴った。
あからさまに独占欲を吐露する形になってしまい、言ってから少し後悔してみる。
だが、凜は表情も変えずに
「確かに。何かずるいよね。むかつく。」
と言ってのけたのである。

私は内心複雑でありつつ、
(友達を独占したくなるのは私だけではないんだ…。凜も同じなんだ。私はおかしくないんだ!)
と思った。


そこで、私は脳内を整理してみた。

私は樹を独占したいと思っている。
樹が、私にはわからない内容で他の友達やクラスメイトと話をしていると苛立つ。


(何だこれ。まるで恋じゃん。馬鹿じゃないの。友達同士で嫉妬みたいなことして。私は焼きもち妬きのクソ男かっつーの。)


私には自分を卑下し、これはおかしいことなんだ、私は普通じゃないんだと思うことしか出来なかった。

だが、凜も同じ気持ちを持っているようだ。

凜は仲間なのか?
もし、これが恋なら…凜はライバル?

わからなかった。
私には2つの答えがあった。
1つは、私は樹に恋をしている。
そして2つ目は、私は樹と仲良くしている亜紀乃やいっしーが嫌い。
つまり、亜紀乃やいっしーの行為(樹と仲良くする行為)が嫌なのではなく、2人のことが嫌いなのだ。


私は後者だと思っていた。
恋もあまりしない、冴えない私がよりによって友達に?あり得ない。

それが私がこの時点で出せる最大限の答えと判断であった。
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