まほろば【現代編】
夜の帳がおりはじめた鳥居に寄りかかるようにしていた細い影がゆらりと動き、こちらに歩を進めてきた。自然とその人物を待ち受けるかのように足が止まる。

「やぁ。さっきはどうも」

真人だった。

「何の用だ」

俺の問いかけに、それまでしていたサングラスをはずすと夜の闇の中で妖しく光る灰色の瞳をこちらに向けてきた。

「用があるのはそっちのほうだろ?」

「……お前……本当に、玄武か?」

そう、コイツからは玄武の気配がするのは確かだった。

だけど、それと同じぐらい別の異質なものが流れているのも感じる。

そのもう一つの気配の方が、どうしても読み解くことが出来なくて心が騒いで仕方がない。

真人は、ただニヤリと口角をあげて笑った。

「何を考えている」
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