まほろば【現代編】
「何か、何か証拠はあるんですか?」

「証拠? そんなもの必要ないわ。あなたにはわからないかもしれないけど、私たちには彼が裏切ったということは自明の理なのよ」

「そんな。じゃあ、真人君は、彼は今どこにいるんですか?」

「それを聞いてどうするの?」

「自分の目で見て、自分の耳で聞いて確かめます」

「そう、あなたは真人君を選ぶのね」

「選ぶって……。何を言ってるんですか?」

「だったら――だったらリュウ君のことは諦めて」

私の質問には答えてくれる気はないらしい。

紗綾さんの瞳の色は強いものから弱いものへと、何かに迷うかのように行ったり来たりしている。

「ねえ、お願いよ。リュウ君のことは私に任せて。いいでしょ? ハルカちゃんには、真人君だってホムラだっているんだから。お願いだから」

最終的には弱さへと流れたのか、紗綾さんは懇願するように私にすがりついた。

その瞳の色はただただ弱々しく、その口はただただリュウのことは諦めろと呟いている。

「あの、紗綾さん。落ち着いてください」

少し強めに発した私の言葉にハッとしたように顔を上げると、スッと私から離れた。
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