まほろば【現代編】
框の手前で足を止めてもう一度声を掛けてみる。

「真人君。いないの?」

わかりきってはいたが、やはり答えは返ってこなかった。

「真人君、どこに行ったんだろう……」

ここにいないのなら、他に真人君が行きそうなところなど私にはわからない。

ここに至って、私は真人君のことを何も知らないことに気が付いた。

知っていることといったら、「真人」って名前と陰陽道について詳しいということぐらい。

もしかしたら、その陰陽道関連の場所にいるのかもしれない。

でも、私自身はあまり陰陽道について詳しくない。

知ってるとしたらリュウだけど、リュウはあの状態だし……。

考え事をしていたからか、私の上に影が差すのに気が付かなかった。

「なんで、ここに来たの?」
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