まほろば【現代編】
竹林に入ってからそれほど歩かなかったはずだから、もうすぐつくはず。

その願いが通じたのか、程なくしてぽっかりと拓けた場所にでた。

目の前には今にも崩れそうな家と呼ぶにはあまりにも粗末な建物が建っている。

その周りだけ、竹が生えていないのでまるで舞台上でスポットライトを浴びているように月明りがあばら家を照らしていた。入り口は開いている。

「真人君」

声をかけながら一歩中に入ってみた。

月明りに慣れていた目は、家の中の暗闇にまだ適応することが出来ず、視界がきかない。

しばらくじっと立ち尽くして慣れるのを待っていると、窓から差し込む月明りでようやくぼんやりと部屋の中が判別できるようになってきた。

広くもない部屋の中だから、探すまでもない。

どうやら、この中には今は真人君の姿は見当たらない。

でも、一応確認と思いもっと奥まで入ってみた。
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