まほろば【現代編】

iii

この場所は、どこまで行っても岩場ばかりのようだ。

今、私がいるところだって四方を岩で囲まれたそれでも少し広めの部屋だった。

ただ、ここは他のところと違って過ごしやすいように床部分にはフワフワした敷物が敷かれている。

おそらくベッドのつもりだろうものまである。

それは、土台はやはり石なのだがその上には痛くないように藁が敷かれ、さらに絹の大判の布地がふんだんに乗っけられていた。

そのほかにも、この部屋だけで最低限の生活ができるだけの設備はそれなりに揃っている。

そしてそのベッドの上に腰掛、先ほどまでのやり取りをぼんやりと思い出していた。

私が残ると言ったとき、スサノオはいっそ気持ちが良いともいえる笑い声を上げてその強い瞳の色を和らげ私を見た。

ついで出た言葉は。

「お主は、やはり面白いな。わかった。では、そちらの女子は返してやろう。イリネ、いるのだろう?」

その言葉と同時に、どこに隠れていたのか先ほどの男が現れた。
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