まほろば【現代編】
【リュウサイドⅨ】

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元々中臣家周辺には人家というものがない。

子の刻ともなれば、あたりはしんと静まり返っている。

泉を呼び出す場所がどこがいいのかとクロキに訪ねれば、おそらくどこでも構わないだろうということなので鎮守の杜の一角にある修行場へと来ていた。

本殿周辺は、例の結界張りなおし失敗のせいで近づくことが出来ないが、幸か不幸か鎮守の杜にまではその範囲は及んでいない。

今この場にいるのは、ホムラとクロキそして紗綾と俺の四人。

アオと父さんは、シロのサポートをしてもらうために残ることになっているのでここにはいない。

ここに来る前に、禊も済ませ浄衣に身を包んだ。

紗綾は紗綾で、同じように禊を済ませ巫女装束を身につけている。

ホムラもクロキも普段着のままではあったが、彼らはもとより仮の姿だからどんな格好をしていようが関係ないらしい。

「では、始める」

クロキが片膝をつき両手を地面に当てると、口の中で何かの文言を唱え出した。
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