まほろば【現代編】
だが、口は勝手に動いていた。

「紗綾!!」

その言葉に、少しだけ紗綾の顔がこちらに向いて微笑んだように見えた。

次の瞬間、強い重力に引っ張られるように体が沈む。


気が付けば鎮守の杜の修行場だった。

呆然とする俺の肩をクロキが気遣わしげにそっと叩く。

我に返り、クロキの肩を掴んだ。

「クロキ!今すぐ戻ってくれ!」

だが、クロキは悲しそうな表情のまま静かに首を横に振った。

「無理だ。今の我にはもう一度泉を引き寄せる余力がない」

「そんな……。どうにかならないか」

今のクロキの言葉で無理なのはわかりきっていたが、どうしてもそんな言葉が出てしまう。

だけど、返ってくるのは無情な答え。

「無理だ。とりあえず、すぐに態勢を整えてそれからだ」

そのクロキの言葉に惰性で頷くことしかできなかった。
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