まほろば【現代編】
「どういうことだ？」

極力怒りを抑えるように声を絞り出す。

「あんなおっさんのところに何日も置かれてたら、そりゃ何にもないわけないだろう？」

思わずイリネに掴みかかるため走り出そうとした俺の肩をホムラが掴む。

そして、思いのほか強い力で引き戻されてしまった。

「ヒリュウ。落ち着いて。だから、言ったでしょ？ハルカは大丈夫」

「そうです。まずは、目的を果たしましょう」

ホムラとアオの諭すような言葉で、どうにか怒りを鎮め改めて現在の状況に目を向けた。

昨日、ここから追い出される直前、確かに紗綾の胸に剣が突き刺さっているのを見た。

だが、今見る限りではとくにどこも怪我をしているようには見えない。

ただ、ただでさえ色の白い肌が今はその白ささえも消えてしまいそうなほど生気がない。

それに、ピクリとも動かないことが余計に不安を煽る。

チラリとその横の人物にも視線を向ける。
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