まほろば【現代編】
スサノオを見上げながら問いかければ、意地悪そうな笑い顔が待っていた。

「なに、儀式に必要なものだ」

「えっ?」

慌てて外そうとするが、何故かくっついているかのようにまったく動く気配がない。

かといって、締め付けられているわけでもない。

「なんで、これ外れないの……」

悪戦苦闘している私のことなどお構いなしに、涼しげな声が届いた。

「そんなことよりも、どうやらそろそろのようだな」

「は?」

スサノオの意味不明の言葉に座り込んだまま再び見上げると、ニヤリと悪戯っ子のような笑顔を見せて、スサノオは私の背後に回った。

何をするのかと思ったら――

「えっ?ちょ、ちょっと、スサノオ!?」

背後から、私を包み込むように抱きしめるとそのまま私を入り口のほうに向けさせた。

いきなりのことに私の鼓動の速さは加速する。

だけど、その速さはスサノオの行動に対してだけではなかったみたいだ。

ただ、あまりにも突然だったのでその意味が全くわかっていなかった。

扉の向こうから、とても懐かしくて愛しい人の気配を微かに感じる。

私は、ほかのことに関する探知能力は乏しいけど、唯一の例外がある。

それが――

扉が徐々に開いていく。

そして、目の前に現れたのは……。
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