まほろば【現代編】

リュウiii

わけもわからず二人の後をついて行ったが、途中から漂う異様な妖気に知らず知らずのうちに冷や汗がにじみ出ていた。

そして、今目の前にその元凶となっている妖がいる。

これが、土蜘蛛だろう。

その圧倒的な存在感と威圧感に飲み込まれそうになるが、それを押し留めているのはその土蜘蛛からかろうじてぶら下がるように存在している者の存在だ。

「真人……」

誰にともなくそう呟くが、まるで現実感がない。

茫然自失といった状態だった俺を呼び戻したのは、彼女だった。

『今から、彼を解放します。手伝ってもらいますよ』

どこから響いてくるのかわからないその美しい声が俺に向けられてハルカの口から紡がれた。

明らかに、ハルカとは別の人物だと今ならわかる。

ただ、その身にまとう雰囲気はどこかしらハルカに通じるものがあり、何か害を為すようには思えなかった。
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