まほろば【現代編】
もう迷いはなかった。

俺の決意を見て取ったのか、彼女は真人の近くにいたスサノオに視線を向けた。

『スサノオ。彼らの状態はどうですか?』

すると、スサノオは深刻そうな顔をこちらに向けて小さく頷いた。

「まだ、間に合う。だが、もうあまり時間はないな」

『そうですか……。では、早速とりかかります。準備はいいですか?』

チラリとこちらに視線を投げかけたが、すぐに正面に向き直ると、その口から美しい歌声が流れ出した。

歌だと思ったものは、祝詞の一種で彼女はそれに合わせるように舞い始める。

キラキラと青い光の筋をつけながら、華麗に舞うその姿はこんな状況にもかかわらず、見惚れてしまうほどの美しさだった。

舞にあわせるように、この空間に満ちていたあらゆる負の感情が徐々に薄れていく。

そして、彼女の舞がクライマックスを迎え、大きく両手をつき上げて終わると、真人と土蜘蛛を覆うように水のように柔らかい深い深い深海のような青い光が包み込んだ。
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