まほろば【現代編】
「飛龍様」

隣にいたツクヨミが声をかけてきた。

「なんだ?」

「遙様と末永くお幸せにお過ごしくださいませ」

「な、なんだよ、急に」

「急ではありません」

そう言うツクヨミの顔は、その言葉を裏付けるように真剣なものだった。

「私は、ずっと願っていたのです。あなた方が結ばれることを」

「どういうことだ?」

「あなたたちは、長い長い年月、何度となく巡り逢っては惹かれあい、それでも結ばれることはなかったのです。私は、いつもそれを遠くで見ているしかありませんでした」

どこか遠くを見るように、ツクヨミの視線は夜空へと向けられた。

「だけど、今回はツチグモの一族のお陰であなたたちの手助けをすることが出来たんです。そういう意味では、今回の事件は起こるべくして起こったのかもしれませんね」
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