まほろば【現代編】
【そして、まほろばへ】

根の国

岩に囲まれた薄暗い部屋の中で、一人の男が物憂げに石造りの椅子に腰掛けている。

何をするわけでもなく、ただ物思いに耽るようにただじっとしていた。

そこに、どこからともなく靴音が響いてきた。

男は、眉を顰めるとその音のするほうへと顔を向けた。

顔を向けた先からは、一人の美しい女性が歩いてくるのが見える。

「お主、ツチグモ一族の者だな」

男は、どこか突き放すような声で女性に言葉を投げた。

「はい」

「何故ここにいる。もう誰も生身の人間がこの国に入り込むことが出来ないように、呪を施したはずだ」

女性は、男の前で膝を折ると深く頭を垂れた。

「私は、ツチグモ一族のミツハと申します。直接お会いするのは初めてでありますが、幼いころよりスサノオ様をお慕いしておりました」

「だから、どうだというのだ?オレの妻になるとでもいうのか?」

「はい」

女性の返答に男は鼻白む。
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