For 10 years
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ピンポーン…



静かな空間に鳴り響くインターホン。



ガチャッ…



開いたドアの先に見えたものは……


絢華ちゃんの泣き顔。


泣きすぎたのか、いつもの明るい表情の欠けらもない。


足元を見ると、蒼太くんが泣きながら絢華ちゃんの足にしがみついていた。



「絢華ちゃん、すぐ出れる?」



絢華ちゃんの返事を聞く間もなく、右手で蒼太くんを抱いて、左手で絢華ちゃんの手を引いて車に乗せた。


病院へ向かっている間、泣きながら“ママ”と言う蒼太くんの声と、絢華ちゃんの啜り泣く声が、車内に響き渡っていた。



その間、俺は、絢華ちゃんのために今何ができるのか、どう接するべきなのか、ずっと考えていた。
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