For 10 years
「絢華ちゃん!」



そう言って絢華ちゃんの腕をつかんだけど……



痛ぇ……


胸が痛ぇ……


それでも、俺がちゃんと伝えてやらなければならない。



「信じたくないのはわかるけど、……優太くんは、ここにいるんだよ」



俺はちゃんとやさしく言えているんだろうか。


絢華ちゃんにわかってもらえるように、言えているんだろうか。



「……やだっ……」



そう言った絢華ちゃんの目から、また涙がポロポロと溢れてきた。


絢華ちゃんの腕をつかんだ俺の手に、ぎゅっと力を入れ、またさっきと同じ方向へゆっくりと足を進めた。


優太くんがいる場所のドアをゆっくりと開けた。


でも……


絢華ちゃんは固まったように一歩も動かない。


中にいた警察官が二人、ゆっくりと歩いてきて、絢華ちゃんの前に立った。



「藤本優太さんのご家族の方ですか?」


「……はい」



絢華ちゃんは弱々しい声で返事をする。
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