For 10 years
蒼太と優華を先にあげて、俺も脱衣場へ出た。


バスタオルで体を拭き、絢華ちゃんが出してくれた服を手にする。



「……」



これって……


正直着るのを躊躇った。


これはきっと、優太くんが着ていた服。


絢華ちゃんの気持ちを考えると、ほんとに着てもいいのかと迷ってしまう。


でも、これは絢華ちゃんが出してくれたもの。


着ないほうが、逆に失礼か?



結局、その服を着てリビングへ戻った。


絢華ちゃんは二人の髪をドライヤーで乾かしていた。



「絢華ちゃん?」



俺の声に振り向いた絢華ちゃんは……


ちらっと見ただけで、また前を向いてしまった。


きっと……


この服が原因だろうと思う。



「隼人さん、ありがとう。二人とも凄く喜んじゃって」


「いや、それはいいんだけど、……これ……」


「えっ?」


「これ、優太くんのだろ?借りて良かったの?」


「うん、大きすぎなくて良かった」



きっと……


複雑な思いを抱えてる……


絢華ちゃんの表情を見て、そう感じた。


やっぱり着ないほうが良かったのかもしれない。
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