For 10 years
この空気をかえたくて……



「絢華ちゃんも入ってきたら?」



と言うと、絢華ちゃんは驚いた顔をした。



「俺、蒼太と優華を寝かせとくよ」


「いや、そこまでしてもらったら……」


「ボク、はやととねたい!」


「ゆうかもねたい!」


「な?こう言ってるし」



少々強引に押しきるような形になっているけれど、絢華ちゃんもその場の雰囲気に流されてか、それを肯定するような言葉を発した。



「じゃあ、入ってきちゃおうかな。蒼太も優華もすぐに寝るのよ?」


「「はぁーい!」」


「じゃあ、隼人さんお願いします」


「ん、一人で入ることなんて滅多にないだろうから、ゆっくり入ってこいな」


「うん、ありがとう」



そう言って、絢華ちゃんは風呂へ向かった。


優太くんが亡くなってからのこの三年、きっと一人でゆっくり風呂に入ることなんてなかっただろう。


少しでも、ゆっくり入らせてやりたかった。


絢華ちゃんが風呂に入るのを見届けてから、蒼太と優華との三人で布団に寝転がった。


元気良く話していた二人が突然静かになって……


気付いた時には、二人とも眠りに就いていた。
< 56 / 119 >

この作品をシェア

pagetop