For 10 years
しばらく沈黙が続いたあと、絢華ちゃんが口を開いた。



「……優太がいるかと思った」


「あ、……これ?」



着ている服をつまみながら聞いた。



「うん」


「だから、思い出して泣いたのか?」


「……うん」



やっぱり。


それから、もう一つ気になっていることがあった。



「一つ聞いていい?」


「何?」


「絢華ちゃん、指輪してないよな?ずっと気になっていたんだ。大切なものなのに、何でしてないんだろうって」


「……してるよ」


「えっ」



絢華ちゃんは、襟元からネックレスのチェーンを引っ張りだした。


そして見せられたものは……



「それ」



そのチェーンには指輪が二つついていた。


絢華ちゃんのものと……


優太くんのもの。



「うん、もう優太とは一緒にいられないから、指輪だけでも一緒にって」



絢華ちゃんの目から涙がこぼれた。


でも……


凄く絢華ちゃんらしいと思った。



「なぁ、絢華ちゃん。……俺、たまにこうやってここに来ちゃダメかな?」


「えっ?」



絢華ちゃんは意味がわからないからか首を傾げているけれど……


俺は、ここで決意を固める。
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