For 10 years
「蒼太?隼人さんが話してるでしょ?」


「どうして?はやとはいいっていったのに」



今にも泣き出しそうな表情で必死に言葉を絞り出している蒼太。



「じゃあ、今日だけいいから」


「きょうだけ?あしたからともだちじゃなくなるの?」


「呼び捨てにしなくても、友達でいられるんだよ」


「そうなの!?」


「うん」


「よかった!」



そう言いながら、蒼太は満面の笑みを浮かべた。


きっと呼び捨てにしないと、友達じゃいられないと思ったんだろう。



「隼人さん、ごめんね」


「俺はかまわなかったのに」


「そういうわけにはいかないよ」



絢華ちゃんは母親だ。


きっといろんなことを考えて、それを子供達に伝えているんだろう。


絢華ちゃんからその向かいへと視線を移す。



「紗羽ちゃん?」


「わっ、覚えててくれたんですか?」



俺が名前を口にしたとたん、紗羽ちゃんは笑顔で声を張り上げた。



「もちろん、絢華ちゃんの親友だからね。今はこっちに帰ってきてるの?」



確か、県外の大学へ行って、そのままそこで就職したと絢華ちゃんが言っていたはず。



「はい。今日には戻りますけどね」


「そっか、じゃあ絢華ちゃんは賑やかなお盆を過ごせたんだ?」


「うん」
< 72 / 119 >

この作品をシェア

pagetop