For 10 years
お盆とお正月は、いつも紗羽ちゃんが泊まりに来てくれるって言っていた。



「はやと、くん」



そんなことを考えていると、横から蒼太が話し掛けてきた。



「蒼太、何だ?」


「またいっしょにおふろにはいってくれる?」


「もちろん入るぞ!」


「ほんと!?」


「おー、また一緒に入ろうな」


「うん!」



蒼太の笑顔が見れて良かった。



「じゃあ、俺仕事中だから」


「うん、あたしは明後日から出勤だよ」


「知ってる」



もちろんチェック済みだ。


そのまま絢華ちゃんのもとを離れたけれど……


正直、胸中は複雑だった。


あれは誰なんだ?


まさか……


絢華ちゃんは、あの男のことが気になってんのか?


調理場へ入る手前で振り返って見ると……



「……」



絢華ちゃんはどうかわからねぇけど、あの男……


ぜってぇに絢華ちゃんのことが好きだ。


あの絢華ちゃんを見つめる目。


俺だって絢華ちゃんのことが好きなんだ。


そういう勘は必要以上に働く。


やべぇな。


今までで一番危機を感じた――…
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