ブスも精一杯毎日を生きてるんです。
ナイフを掴んだ右手から、赤い雫が落ちる。
中年の男は放心状態で、
「…わかった、俺が悪かった。借金返済はしなくていいから、警察はやめてくれないか」
そこまで聞いたところで、ナイフを掴んだ手を離した。
離すと麻痺していた感覚が戻ってきて、さらに痛みが増して右手に突きささる。
血がリズミカルにポタポタとおちていく。
次第に感覚は消えて行った。
それでも妥協することなく交渉を進める。
「一千万円で見逃してもらおうだなんて、世間を甘く見過ぎじゃないですか?警察に突き出せば、その何十倍も落とすことになるんですよ」
「わかった、三千万円だ。」
俺はまたにたりと笑った。
「金額はそれで手を打ちましょう。それともう一つ提案があるんですよ。」
「うちの会社の社員になりませんか?」