初恋メランコリック
「じゃあ、今日は早く寝なきゃじゃん!千尋は練習試合なんだから、朝早いんでしょ?」
「あ、うん。そうだけど…」
そう言ってあたしは千尋の背中を押して、部屋へと連行する。
そんなあたしに早乙女さんは、クスクスと笑いながら様子を見ていた。
じゃあ、明日は午前中あたし一人か……
なんかさみしい気もするけど、しょうがないか。
「ちょ、ちょっと茉奈ちん!早く寝ろって言っても、まだ9時だよ!?そんなに早くベッドに入っても、気分は乗らないよ。あ、でも茉奈ちんだったら別かもだけど……」
「なんの気分だよ。」
相変わらず下ネタ発言満載の千尋を、部屋の前まで連れて行く。
あたしはさっき起きたばっかだけど、まだ寝れそうだ。
早くお風呂に入って寝よう。
そう思いながら、あたしは千尋を部屋へ押し込む。
「あっ、茉奈ちん待って!」
「なに?いい子は早く寝なさい。あたしもお風呂に入ったら、すぐ寝るから。」
「えっ……お風呂?」
「変な風に解釈するな。」
頬を赤らめながら、目がムダにキラッキラしている千尋にあたしは、デコピンをお見舞いしてやった。
千尋は片手でドアを開けて、もう片方の手でおでこを押さえている。
そんなに痛かったかな、あたしのデコピン。
「で?早く用件をいいなさい。」
「あ、えっとね……茉奈ちん、」
そう言って千尋はあたしを呼ぶ。
「だから、何って……」
「……おやすみ。」
千尋は優しげに微笑みながら、あたしにそう言った。
完全な不意打ち。
どんなに中身が変態野郎でも、外見はかなりのイケメンだ。
そんな千尋にあたしは一瞬躊躇った。