白い吐息
 校庭の方に向かってみると、この寒空の中高校生達が部活動をしていた。

 学校の敷地近くの備え付けのベンチに座って彼らを見ていると、一人の男性が近づいてきた。

「……千恵?」
「え?」

 立ち去ろうとした私だったけど、思いがけず名前を呼ばれ私は振り返った。

「やっぱり千恵だよな」
「え……北野先輩?」

 私が答えると、彼は白い歯を見せて破顔する。陸上部の先輩だった北野……敦さんだ。

「久しぶりだな! 今は何してるの?」
「東京で働いています。先輩は?」
「俺はここで教えてるんだ。陸上部の顧問」

 笑顔で答える先輩が輝いて見える。そして私の胸の奥で、ずきりと何かが音を立てた。
 ――昔、彼のことが好きだったから。
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