ありがとうと伝えたい



「ちょっと!かなみまちなって!」


ツカツカと
歩く私を
必死でとめようとする
ゆうな。

私は無視して
迷わず
だいきのクラスへ向かう。

私は
許せなかった。

そして話を聞きたかった。

なんで
こんなだいきになったのかを…


ゆうなは
薄々察し
黙っていた。


だいきのクラスの
前にたつと
一気に緊張がピークした。

深呼吸して
開けようとしたそのとき…


「あれ?かなみちゃんじゃん♪」


バスケ部部長
あきらが
ジュースを
飲みながら
教室からでてきた。

「なーにしてんの?あ、だいきに会いにきたの?」


にっと笑ったあきらは
だいきを呼びにいくと
教室へ入っていった。

ゆうなは
呆れ顔で
あきらをみつめた。


「バスケ部ってチャラいのしかいないのね」

しばらくすると
まだにやにやしてるあきらと

いつもより
髪型を気にしている
だいきが現れた。


あきらは
私に向かってこう言った。

「ここだと…ファンくるから屋上いきなっ!ね?だいき」


「わかったわかった…あきらうるさいからおまえくるなよ」


「はーい!了解♪ じゃっかなみちゃんまたね♪」



あきらが教室へ入ったあと、だいきはまじまじと
私をみつめた。


「珍しいね、かなみが来るなんて…なんかあったの?」


私は
だいきの顔を
真剣な顔で
みつめかえした。


「あのね…スッゴく大事な話をしたいの。屋上いきましょ?」



だいきは
私の静かな声に
一瞬驚いたが
ふっと笑った。


「わかった…だいたい分かってるけどね」


どこか
苦しげな表情の
だいきは
屋上へと向かっていった。

ゆうなが
私へ話し掛けてきた。


「なんかあったらいうのよ?バスケ部なにするか分からないから」


「平気、私以外と強いよ!知らなかった?」

私の
すまし顔に
ゆうなは笑った。

私も笑った。

だいきは
先にいっていた。





屋上へ着くと
だいきは
無表情で
外を眺めていた。

私は
そんなだいきの
近くへ行く。


だいきは
無表情のまま
つぶやいた。


「俺さ…自分が嫌だったんだ」

「え?」

「なんていうか…お人よしっていろんな人から言われて…俺それが嫌だった。だから変えようとしたんだ」

だいきは
苦笑いをした。

それから
私を
みつめたあと
また景色をみた。

「強くなりたい俺は、がむしゃらに喧嘩を強くして…ほんとはチキンでなんとも思わないのにキレてみたり、いろんな女の子と付き合ってみたりした。そうすれば強くなれるかなって…」



だから
だいきは
変わったんだ。

うちと会ったときは
無邪気で平等だった。

でも
いつしか
それが苦痛になって…


私は
静かに黙って聞いていたが
だいきに向かって
こういった。


「だいき、強いっていうのはそんなんじゃない、何を言われても負けないで立ち向かうってことだよ」


「え…?」

「逃げないで自分と向きあったらよかったんだよ!結局、だいきくんはいろんなものを失ったの!でも、だいきくん、だいきくんは変われるよ!」


私は
だいきの顔をみて
笑った。

話をきいて
分かったのは

弱いだいきくんが
いたってこと。

みんなに負けたくない
だいきくんは
違うやり方を
してしまったこと。


しばらくすると
だいきは
笑っていた。


「やっぱりかなみはすげぇや…昔から変わんないね」

どこか
すっきりした表情の
だいきは
私を見つめていった。



「俺は…小さいときいっつも泣き虫なかなみのことがいつしか、気になっていたんだ。だから俺がなんとかしなきゃって思ってた。でも、離れるってときは泣いた。ずっと泣いてた。」



深呼吸してだいきは
そう言った。

そして、空をみながらまた言った。


「また会えたとき、やっぱりどこかで追っかけてるんだ…かなみのことを。」

私をみつめた
だいきの目は
真剣だった。


私はそんな
だいきの真剣な想いを
受け止めようと
決めた。


「ねぇ…ゆかちゃんにそのこと伝えなよ?じゃなきゃ付き合わない」


私のこの言葉に
だいきは驚いた。


「え?付き合わないって…」


私は
にこっと笑って言った。

「さっきまではだいきくんを疑ってた。だけど今は違う…私も大好きですっ」


だいきは
びっくりしてたが笑った。


いつしか
曇り空だった天気は
太陽がでてきていた。


私はこの空に誓う。

絶対に
だいきの味方でいるって。


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