棚の向こう側
「ん……」



 唇を重ねられ、私はその舌使いにすぐに翻弄される。



 いつもそう、唇を重ね、抱きしめられる。



 人がいつ来るかわからないという緊張感と、彼氏が棚の向こうにいるという背徳感が、私を燃え上がらせる。




 そして逢瀬が終わると、まるで魔法みたいに探していた本を彼が持たせてくれる。










 私は、この彼の名前を知らない。




 この人が、現実にいるものかどうかも、知らない。











 それでも私は、図書館での秘密の逢瀬を続けるのだ。
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