若き店主と囚われの薔薇
「ホラ、今日の飯だ」
乾いたパンは、お世辞にも美味いと言えるものではない。
それでも、俺の手から配られる一切れのパンを、子供達は嬉しそうに受け取った。
「……………」
服を脱ごうとしていた赤髪の少女は、呆然とこちらを見つめている。
俺はその視線の意味を無視し、「お前が着る服は、そこの隅に置いてある」とテントの隅を指差した。
しかし、少女は返事もしない。
眉を寄せて、俺と子供達を見ていた。
「………その子達も、奴隷なの?」
美味しそうにパンを頬張る子供達を見て、少女は悲痛そうに眉を寄せる。
俺は静かに、「ああ」と言った。
今、この店には六人の子供がいる。
皆、親に捨てられた、五、六歳くらいの子供だ。
この店に売られて間もない頃こそ暗い表情をしていたが、今ではこの暮らしと生き方に慣れ、笑顔も垣間見るようになった。
いつ自分は笑って良いのか、沈んで良いのか。
それを、この子供達は知っているのだ。