センパイと美術室で…
「……そうだったんですか」
わたしも高校の時、彼氏がいた。
だけどそれ以上に、松田センパイのことが好きだった。
好きで好きで、たまらなかった。
―――その大好きだったセンパイが今、目の前にいる。
それだけでもう幸せだと思った。
あの時は、センパイが遠すぎて、わたしなんか足元にも及ばなかった。
「……松田センパイ」
「ん?」
「実はわたしも、好きなひとがいたんです」
「えっ?」
「たしかに彼氏がいたんですけど、それ以上に好きなひとがいたんです。好きで好きで、たまらなかったひとが」
「……それって」
「―――センパイのことですよ」
センパイとガッチリ目が合う。
……センパイのその瞳に、吸い込まれそう。
「―――実は俺も、双葉のことがずっと好きだった」
「えっ?……んっ」
わたしの唇は、センパイの唇によって塞がった。
唇に伝わる熱が、誰よりもじんわりと熱かった……。
«完結»


