東京

「何かあったの?静岡帰ってきてまず二人で遊ぶなんて珍しいら?」


紗耶香さんは白い頬っぺたを少し赤くして
黙ったままこっちを見た。

「バイトの悠哉ってやつ?」


『今絶交中だから関係ない。』


「恋人同士かよ。」



『違うよ。』


紗耶香さんは何がしたいんだろう。

絶交中で寂しいからか?
純粋な気持ちで俺に会いに来てくれてるのか?

ドーンッ

一発目の花火が上がり焦げたような煙の匂いが鼻をかすめる。

『座ろう?』


俺たちはその場の階段に腰をおろした。

ドーンッ!ドンッ!パラパラパラ

草の上にはたくさんの人が座り花火をみている。

焼きそばやいか焼きな匂いを吸い込みながら。

しばらく黙って花火を見ていると隣で紗耶香さんの携帯が光った。

『ごめん』

立ち上がり木の影に隠れて誰かと話をしている。

俺は隣がぽっかり空いたまま、一人真っ直ぐ花火を見続けていた。

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