東京

もし俺がばっちと一緒に戻っていたら

もし話す場所を学校にしていたら


もしあゆみがばっちに相談する前に気付いていたら




もし私がばっちに相談してなければ


もし自分で真悟に話せていれば

もしあの時眠らなければ


どうしようもない


もし

が、頭の中をぐるぐる巡る。


『…嘘だ。』

「あゆみ?」

『ばっちってたまにね、意味のない嘘ばっかつくの。』

「…。」

『あゆみ何言っとん?』

『B型の癖にA型って言ったりさ。三人兄弟の癖に一人っ子って言ったり。
サッカー部の癖に弓道部だとか
自分でもなんのために嘘ついたかなんてわからないって、笑うじゃない。』


こんな悪夢は
かき消したい気持ち
みんな一緒だった。

特にあゆみは
ばっちの存在がでかすぎたんだ。

みんなにとっても
無邪気で
アホで
優しくて
情に脆くて
強がりで
何より友達思いで
突拍子もない

ばっちは大切だった。

「あゆみ。ちゃんと現実見ろよ。」

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