東京
黒い喪服の行列は
すすり泣く声や
大声で泣き叫ぶ人たちばかりで

胸が痛んだ。


家族はばっちにすがり付き
「雅也!雅也!」

と声をあげる。


俺たちの知らない静岡の仲間達も。

東京で起きた不運な事故。
俺たち東京の仲間を
静岡県は受け入れてくれるだろうか。



遠くから呆然と近づけないでいる俺たちに
来いと
手招きしてくれたのは
チンピラみたいな一人の男だった。



「ばっちの親友だけん、東京の話はよく聞いてたさ。ちゃんと見てやってほしい。」


みんなは一斉に
ばっちに駆け寄った。

あゆみを除いて。


「ばっち!」

『いやや。帰ってきてよ。』

「ばっちごめんな。こんな…」


体が動かなかった。
だけど俺は
あゆみをどうしても連れていかなければ。
ばっちが最後にしたことはばっちの最後の時間は俺とあゆみのために使われたのだから。


「あゆみ。行けよ。」


ガチガチに固まり震えるあゆみの体を、ばっちの元へ連れて行った。

眠っているようだった。

死んだなんて
信じられなくなるような。

顔はキレイで、今までと何一つ変わらない。


また
「真悟はバカだなぁ」


と笑ってくれるような気がして
涙が流れた。


「ばっち…。嘘だろ…。」
あゆみは一歩ばっちに近づき

顔にそっと触れた。

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