君に Ⅰ

いや。


もう過ぎたことはいいんだ。



舞歌はここにいる。


それだけで、十分だった。




俺は、面会時間終了ぎりぎりまで、舞歌と話した。







そして、もうすぐ楽しかった時間が終わる。



「あ、もう時間だ。俺、もう帰るね。」

後ろを振り返る。

舞歌が子犬のような目で俺のことを見つめていた。


俺はため息をつきながら、舞歌の頭をなでた。

「明日も、また来るから。」

「絶対?」

「うん。」


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