ねぇ、先生【TABOO】
「――西条?」

 懐かしい、低い声が私を呼び止めた。
 髪を飾っていた紫のリボンが、タイミングをはかったかのようにはらりと落ちて宙を舞う。
 思わず手を伸ばした先生の手に、それはすぽりと収まった。

「私、先に行ってるね」
 友人は立ち止まることもなく、部室へと急ぐ。

「先生、お久しぶりです」
 私は、何の感情も見せずにぺこりと頭を下げた。

――あなたがあっさり振った女はこんなにいい女になったわよ?


 少しは振ったこと後悔してよね。
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