ねぇ、先生【TABOO】
 先生は、当然のように私の髪にリボンを巻いた。
 相変わらず、器用。

 少し甘ったるい煙草の香り。メガネの奥の何を考えているかわからない冷たい瞳。そして、――私が大好きな低い声でそっと囁いた。


「すっかりオトナになって」

「――おかげさまで」

 私はそういうと軽やかに踵を返す。
 でも、後ろからぐっと手を掴まれた。

「――先生?」

 なるべく動揺を抑えて、問い返す。
 先生は、整った顔の眉間にもったいないほどの皺を寄せた。

「もう、お前の先生じゃない」
< 5 / 6 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop