はなおの縁ー双葉編ー

今日は、友達と甘味やの扇屋へ行くつもりをしていたのに、考査の範囲が今日発表になってしまったので、それどころではなくなってしまった。

2年生までは、のんびりと構えていられた考査も今年はいよいよ受験というものを嫌でも突きつけられるわけで、のんびり屋のあたしでさえも、友達が慌て出す様を見て、変なところが感化されてしまったみたいで、仕方なく甘いものはお預けで、とりあえず、家の机におとなしく座ることを考えてしまった。

おたがい、落胆の色をした顔を臆面もなく見せ合うように、友達と顔をひきつらせて別れを告げ、昇降口へと向かう。

雨音がにわかに激しくなったようで、雨どいからドシャドシャと雨水が流れている。
   
「うわ~、こりゃ帰ったらびしょ濡れだわ。」

と、しばし、校庭を見つめていた。

たいした時間ではなかったけれど、こういう心境の時は時間を無限にするのだろうか。

なんだか、日が暮れるまでここにいなくちゃいけないように感じたのが怖くて、

(えーい、ままよ。)

と足袋が濡れるのを覚悟で歩き出す。

もう、5月を過ぎて寒さなんて感じるわけがないのに、濡れたところから冷えていくようだ。

「急いで、帰ろ。」

なんとも、自分を励ますみたいに呟いていた。

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