はなおの縁ー双葉編ー
「ごめんなさい、こんな辛気臭い話するつもりじゃなかったんだけど、何となく話してしまった。今の話、忘れてください。」

と、麦湯を口に含む。

「俺も似たようなもんかもしれないな。」

と彼も麦湯を飲み干し、お代わりを告げてから話し始めた。

風が吹き流れ、汗ばんでいた体を乾かし始めている。

「俺も二親の顔を知らないで、育ってるんだ。」

、、、、、、、え?

「本当に?」

彼はそれに頷いて返し、先を続ける。

「物心ついた時には、すでに二親は亡くなっていた後で、俺を育ててくれたのは一番上の兄夫婦だった。うちは全部で7人兄弟で俺はその末っ子なので、兄弟が面倒を見てくれたんです。」

そう言って、にっこり微笑む彼に驚きを隠せない。

「女兄弟は皆、嫁に行ってしまっていたけれど、家に帰れば、なんやかやと世話を焼いてくれた。親はいなかったが、寂しい思いは少しもせずにすんだ。、、、、まあ、たまに、よその子が親と歩いているのを見て、泣いて帰ってきたこともあったけど、それ以上に兄弟が愛情を掛けてくれたからね。、、、、そういうところは君と似ているかも知れないな。」
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