過去から熱くなる
「詩織」
振り向いた職員が先に私の名を呼んだ。
「透(とおる)」
カウンターの中にいたのは私の初恋の人。
私は逃げようとしたが足が動かない。
「また会えて嬉しいよ」
透の声に、私の心と体は一気に過去に引き戻された。
「何?用があったんだろう」
昔と変わらない口調。まるで昨日も会っていたように私を包む。
「これ見ていたの」
透が新聞を覗きこむ。彼が県の陸上大会で一位になった時の写真。
そして笑顔の彼の後ろに小さく私が写り込んでいた。

「コピーしたいと思って」
私は言った。
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