Sales Contract


シートベルトをしめると、急に春樹のことを困らせたいと思った。


「今日は改めて色々話せてよかった。
ありがとね」

「いや、こっちこそありがと」

「ねぇ、春樹…」

「ん?」


顔を傾けてこちらを覗き込む春樹の目を見つめた。

「今から10年前、あたし…春樹のこと好きだったよ」

「え…?」

切れ長の目が大きく開いた。

「春樹が初恋だったの」

しばらく沈黙があったあと、春樹が急に微笑んだ。
その顔があまりにも優しくて、ドキドキしてしまう。

< 168 / 310 >

この作品をシェア

pagetop