Sales Contract
シートベルトをしめると、急に春樹のことを困らせたいと思った。
「今日は改めて色々話せてよかった。
ありがとね」
「いや、こっちこそありがと」
「ねぇ、春樹…」
「ん?」
顔を傾けてこちらを覗き込む春樹の目を見つめた。
「今から10年前、あたし…春樹のこと好きだったよ」
「え…?」
切れ長の目が大きく開いた。
「春樹が初恋だったの」
しばらく沈黙があったあと、春樹が急に微笑んだ。
その顔があまりにも優しくて、ドキドキしてしまう。