Sales Contract


「日曜の夕方に呼び出すなんて、すごい度胸だな」

不機嫌そうな声で社長が言った。

「ここまで来てくださった社長には負けますよ」

ふっと鼻で笑うと、車は走りだした。

「何かあったのか」

「こんな風にわがまま言っても来てくれるのか、知りたくなったんですよ」

愛想笑いも今日はする気になれないので、可愛げの無い低い声でそう返した。

「一応心配したんだけど」

「優しいんですね」

「大事な秘書を放っておく訳にはいかないだろ?」

運転する社長の横顔を見ながら、こういうのも悪くないと思った。


< 88 / 310 >

この作品をシェア

pagetop