17-甘い君たち-
「_____南緒」
俺が小さくそう呼ぶと、南緒の華奢な背中が少しだけ揺れた。そして、俺の方へと振り返る。
「……翔太」
ポトリ、と。南緒の涙が床へ落ちた。
南緒が、小さな肩を震わせて、泣いていた。
その瞬間、俺は頭に血がのぼって、目の前が真っ白になった。気づけばクソ野郎の胸元を掴んでいて。
……だって南緒が、泣いてる。
強がりで、弱さを滅多に見せようとしない、あの南緒が。
「……おまえ何した」
「……見られたくなかったんだろ」
「は?」
「おまえに、お前たちに、見られたくなかったから泣いてるんだよ、南緒は」
「は、なんだそれ、」
「おまえらがいたら、南緒は自由になんてなれない。幸せになんて、なれない」
_____ふざけんな。
ガッ、と鈍い音がして、クソ野郎が本棚へと倒れた拍子に何冊かがバサバサと落ちてきた。
驚いた南緒が俺の手を、掴んだ。その手はひんやりと冷たかった。
「やめて、翔太……。」
やめて、と。泣きながら言う南緒の手を俺は振り払う。自分でも驚くくらいイラだって、止まらなかった。
「なんであいつを、庇うの?」
俺はもう、南緒のことも自分のことも、わかんねーよ。