17-甘い君たち-
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「なんだよ……」
ガチャリと、音を立てて扉を閉めたのは翔太だ。
南緒だけを、リビングに残して、廊下に出る。
なんとなく。なんとなくだけど、翔太が言いたいことがわかる気がした。だって俺らって、いつも変なところで一致するだろ?
翔太は顔を伏せながら、重い口を開いた。
「…もう、限界だと思わないか」
限界。
一瞬何を言っているのかわからなかった。いや。でも多分、俺が想像していたのも、その言葉だった。
「あと、少しだったのにな」
8年前のあの約束まで。あと少しだったのに、ここで終わらせるのか。俺たちは。
「俺もそう思ってるよ。
でも、終わりじゃないだろ。こっからなんだ、俺らの始まりは」
「始まり、ね。翔太のくせにいいこと言うじゃん」
ははっ、と。2人ともから笑いが漏れる。この8年間を思うと、泣けてきそうだよ。
なあ、翔太、お前もそうなんだろう。
「言うのか、南緒に」
「言って、堂々と戦おう。
俺らにはそっちのがきっと似合ってる。」
ああ。多分、翔太の言う通りだ。
二人とも静かに目を閉じた。そして、同時に開く。
「今日で終わりだ」
翔太の声に、俺はグッと拳をにぎる。
そしてその手を、前へと突き出した。
「そして今日が、やっとスタートライン」
翔太の拳が、俺のそれに当たって、俺らは2人して笑った。
今日、2人で誓った約束を破る。
8年前のあの日。小4の時に交わした、俺らの絶対的約束を、今日、終わりにさせる。
こっからだ。
こっからが、俺らの本当のスタート。
そして、崩す、この完璧な三角関係を。
再び目を閉じて、あの日見た夕日の色を思い出す。翔太の隣で誓った、俺らの8年間をかけた、あの絶対的約束を。