17-甘い君たち-

■□J□


「なんだよ……」


ガチャリと、音を立てて扉を閉めたのは翔太だ。

南緒だけを、リビングに残して、廊下に出る。

なんとなく。なんとなくだけど、翔太が言いたいことがわかる気がした。だって俺らって、いつも変なところで一致するだろ?


翔太は顔を伏せながら、重い口を開いた。


「…もう、限界だと思わないか」


限界。

一瞬何を言っているのかわからなかった。いや。でも多分、俺が想像していたのも、その言葉だった。


「あと、少しだったのにな」


8年前のあの約束まで。あと少しだったのに、ここで終わらせるのか。俺たちは。


「俺もそう思ってるよ。
でも、終わりじゃないだろ。こっからなんだ、俺らの始まりは」

「始まり、ね。翔太のくせにいいこと言うじゃん」


ははっ、と。2人ともから笑いが漏れる。この8年間を思うと、泣けてきそうだよ。

なあ、翔太、お前もそうなんだろう。


「言うのか、南緒に」

「言って、堂々と戦おう。
俺らにはそっちのがきっと似合ってる。」


ああ。多分、翔太の言う通りだ。
二人とも静かに目を閉じた。そして、同時に開く。


「今日で終わりだ」


翔太の声に、俺はグッと拳をにぎる。
そしてその手を、前へと突き出した。


「そして今日が、やっとスタートライン」


翔太の拳が、俺のそれに当たって、俺らは2人して笑った。


今日、2人で誓った約束を破る。


8年前のあの日。小4の時に交わした、俺らの絶対的約束を、今日、終わりにさせる。


こっからだ。


こっからが、俺らの本当のスタート。
そして、崩す、この完璧な三角関係を。


再び目を閉じて、あの日見た夕日の色を思い出す。翔太の隣で誓った、俺らの8年間をかけた、あの絶対的約束を。

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