17-甘い君たち-
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限界だ、と思った。
俺が南緒の家に戻ってきたとき、聞いた尋の震えた声。南緒の弱々しい声。
失うことは誰だって怖い。
それは俺らだけじゃなくて、南緒だって同じだったんだよな。こんなにずっと一緒にいるんだ。離れることを怖がない方がどうかしてるよ。
さっきのあの女みたいに。何もわかってない第三者は、俺らを見てさぞかし滑稽に思うことだろう。
好きならさっさと手にしてしまえ、と。何を迷ってる必要がある、と。
でも、俺らは " 3人 " なんだよ。
どちらかが傷ついて、どちらかが南緒の隣に選ばれるんだ。絶対、絶対に。
1人で恋をしているんじゃないんだよ、俺らは。そんな甘いものじゃねえんだ、もう、この気持ちは。
半透明のガラス張りになった扉から見えた南緒の涙を見て、思う。
もう、限界だと。
俺も、尋も、そして、南緒も。
すべてがもう、限界に近いんだ。
安藤とかいうクソ野郎や、あの女のおかげでもあるかもしれないな。俺たちがこのままでいるのはもう、無理だっていうことに気付けたのは。
俺らの馬鹿げた約束も、ここで終わりにしよう、尋。
すべて、終わらせるんだ。
そしてまた、始めよう。
今日、この日を境にして。