【短編】ショートメッセージ
今日は休日出勤の振替で、休みだった。朝9時を回っていたが身体を横たえたまま、未だに水さえも口にせず、動かなかった。

いや、動けなかったのだ。

過去の記憶に足を取られて、身動きが取れない。その度に胸が疼き、呼吸が荒くなっていく。涙が滝のように流れ落ち、最後に交わした約束が、宙に浮いていた。

『結婚、しようね』

彼の優しい笑顔だけがまぶたの裏に現れるのだ。

その時だった。枕元にあるサイドテーブルに無造作に置いてあった携帯からメールの着信音がしたのだ。

淡い期待が、私の気持ちを揺らす。震える手は、そっと携帯を握っていた。

(あ…)

ところが、予想は大幅に外れていた。

(なんだ、迷惑メールか…)

知らない番号からのショートメッセージだったのだ。

(どこのサイトからだろう)

ネットで買い物をした時、何処かのサイトから、情報が漏れたのだろうか。普段、必須事項でない限り、携帯の情報は入力しないのだが…
 いつもの自分なら、読まずに削除する。しかし、いつもと同じとは言い難い今の私は、暇潰しにそのメールに目を通していたのだ。
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