【短編】ショートメッセージ
『失恋しちゃったんだね』

改めて、"失恋"という事実を文字で認識してみると、なんとも言えぬ侘しさが私の胸を締め付けた。

そうなんだ。私は、失恋した。

急にしんみりとしてしまい、返信の速度が格段に遅くなっていた。気付けば、携帯の画面に雫が落ちていた。
 
床に座り、背中を丸め携帯を握りしめていた私は、もう出ないだろうと決めつけていた涙を流していたのだ。

『沙羅』
 
手の中の携帯が震えながら、メールを知らせる。

『ごめんね。ちょっと思い出しちゃった』

『泣いてるの?』
 
彼のメッセージを読みながら、私は涙を指で拭った。

『大丈夫。泣いてないよ』

『力になれなくて、ごめん』
 
彼の返事が、直接私の胸に届いたような気がした。本当に、『気』なのだけれど…

『そんなことないよ。ありがとう。おやすみなさい』
 
これ以上、彼を悲しい気持ちにさせたくない…
 
私は自ら今日のお別れを言って、眠りについたのだった。





< 9 / 44 >

この作品をシェア

pagetop